嘘カノでも幸せになれますか
1曲演奏し終えて自分のダメだったところを楽譜で再確認していたら、タクさんから
「ユズ、キーボード上手だね。オリ曲なのにこんなに早く習得できるなんて、凄いよ」
「えっと、私のオーディション結果はどうなんでしょうか」
「ん? オーディション? ユズの?」
「はい。私がキーボードできるかどうかの・・・」
「そうなのか、ダン。そんなことをユズに話したのか?」
「はぁ? 俺、オーディションなんて一言もいってねぇよな、ユズ。なに勝手に頭の中で話を作ってんだよ」
「だっ、だってここに来る途中で私がキーボード弾けるかどうかスタジオで聴くからってダンが言ったんだよ」
「そりゃ弾けるかどうかは重要だけど。だいたい高校生でピアノ習ってるって、初心者じゃないって分かるだろ。小さい頃からピアノ習ってるんだろ?」
「う、ん。もう10年以上ピアノ習ってます。じゃあ、またキーボード弾きに来てもいいんですか?」
「当たり前だろ! ユズにはレコーディング助けてもらうつもりだから。MGRがフェスに出れるかどうかはユズに掛かってるんだからな」
「MGR?」
「ああ、言ってなかったか。俺たちのバンドの名前。メリーゴーランドって言うんだ。略してMGR」