嘘カノでも幸せになれますか
ゆっくり歩いていた足を止めて、ダンが私の方を向く。
「なあ、ユズ。俺ってそんな風に見えるのか? 俺には付き合ってるヤツがいて、それなのにユズに嘘で付き合おうとか言う男に見えるのか? なあ」
なんかダンが怖い。
何故か私がダンに責められている。
「そうじゃないけど。でも、私はダンと知り合いになったの最近だし、ダンのこと全然知らないし。ダンは色々慣れてるんだもん。彼女いてもおかしくないでしょ」
「ユズ」
私の名前を呼ぶダンの声が低く響く。
「は、い」
「俺な、今まで誰とも付き合ったことないなんて言わない。彼女はいたよ。いたけど、慣れてる訳じゃない。相手が違うんだぞ。前の彼女とユズは違う人だろ」
「彼女がいたって過去形で話すっていうことは、今はお付き合いしている人がいないって受け取っていいの?」
「ああ。付き合ってるヤツはいないよ。ユズは心配すんなって」
ダンに彼女がいない事にホッとした。
ただ、電話の『香梨奈』さんのことは聞いてはいけないような気がして。
彼女じゃないなら『香梨奈』さんって一体・・・。