嘘カノでも幸せになれますか
「行ってきまーす」
早く家を出たから、いつもより1本早い電車に乗ることができて。
それだけでなんだか気持ちがいい。
学校の最寄り駅の改札を出て、ふっと券売機の方を見てみる。
あそこで初めてダンと話したんだっけ。
あの時、ダンのことを迷惑だなって思って素っ気ない態度を取ったのに、私が駅から学校までの往復した30分、待っていてくれたんだよね。
「ふふっ」
思い出し笑いをして、目線を前に移して歩こうとした瞬間、誰かにぶつかってしまった。
「あっ、すみません」
謝りながらぶつかった人の顔を見る。と、そこにはダンが笑いながら立っていて。
「わぁ ダン! おはよう。ごめんね、ぶつかっちゃった」
「おはよ、ユズ。何をニヤニヤしてたんだ?」
うっ、思い出し笑いをダンに見られてた。恥ずかしい。
「べっ、別にニヤニヤなんてしてません」
ダンから顔を背けて恥ずかしさで赤くなった頬をパンパンと両手で叩いて、気持ちを落ち着けていると、
「ユズは乗ってくる電車の時間がいつも違くないか? 今日は早いんだな」
ダンは普通に会話をしてきた。
「そう言うダンも早いね。どうしたの?」
「ユズを待ってた。なんとなく昨日の4人のことが気になったからな」