嘘カノでも幸せになれますか

どうしよう。早く咲希だけには本当のことを話さなきゃ。

朝練をしているであろう咲希に一刻も早く会いたくて、ダンのことなんて放っておいて駅から走り出した。

「ちょっと待てよ、ユズ」

走り出した私の腕をあっという間に追いついたダンが掴み、私の動きを止める。

「ダン、離して。咲希に早く会いたいの。まだ咲希に話してなくて。噂の方が先に届いちゃうよ。そんなのだめ」

「分かったから、待てって。体育館に行くんだろ。一緒に行くから。俺は一輝の方が心配だから」

「一輝先輩は関係ないよ。それよりダン、早く行こう」

早く行こうなんて言った私がダンの速さについて行けない。

ダンと学校へ行くときはいつも走っているような気がするな。

そしていつも私はダンに勝てなくて。

「ちょっと待ってよ、ダン」

ダンに引きずられるようにして学校まで走って、やっと咲希と一輝先輩が朝練している体育館に着いた。
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