嘘カノでも幸せになれますか
ちょうど朝練を終えたバスケ部のメンバーが体育館からで出てきたから、私は咲希を探した。
「あっ! 咲希!!」
咲希を見つけたからそばに行こうとしたら、どこからか私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「柚葉ちゃーん! 朝から会いに来てくれたのか?」
その声の方に振り返ると、そこには大きく腕をブンブン振ってこっちに歩いてくる一輝先輩がいて。
そんな一輝先輩を見たダンが私の前に立ち、盾になってくれた。
「柚葉ちゃん、おはよう。今日もかわいいな」
一輝先輩と私の間にダンがいるのに、ダンのことをまるっきり無視して私に話し掛けてくる。
「か、一輝先輩、おはようございます。さようなら」
私はダンの背中越しに一輝先輩へ朝の挨拶をして、咲希の方へ走って逃げた。
その場に残されたダンと一輝先輩がどうなったのかは、もうどうでも良かった。
とにかく咲希と話がしたくて。