【短編】君のすべて
特別?
「今度の餌食はあいつか?
可哀想に…。」
『慎也~!!
朝からうっさいよ。』
「お気の毒に…。」
朝から本当うっさい。
「ところで昨日のお礼に何してくれんの?」
そんな事だろうと思ったよ。
『ご飯でいい?』
笑顔を向ける私に
口角を上げる慎也。
「じゃあ、今日の夜は飲みに行こうぜ?」
『今日は…無理。』
「あぁ?
どうせカモだろ?」
まぁそうだけど…。
「昨日、花澄ちゃんは誰に助けられたんだっけ?」
『慎也さんにですぅ。』
「じゃあわかってるよな?」
小さくため息をつき
携帯を取り出しメールをする。
<朝から熱が出ちゃったよ~。
会えるの楽しみにしてたのにぃ。
今日は無理そう…ごめんね>
そんな嘘のメールに
優しく気遣ってくれるメールが入ってくる。
嘘をつく事にも
もう罪悪感なんてない。
自分でもわかる―――。
歪んでるって。
でも、今更止められない。
浮かんでは消える。
――私は守られるタイプの女じゃない。
それを払拭したくて…
愛想笑いを振りまくんだ。