【短編】君のすべて
結局いつもの居酒屋
「生2つ!!」
席につくなりそう頼んだ慎也。
自分で頼んだ癖に
それで良かったよな?って…。
まぁ良いんだけどさぁ。
返事も聞かずに料理を注文しちゃってる。
「とりあえず乾杯~。」
グラスが重なる音。
男といる時はいつも私のペースなのに
慎也にだけはペースを持っていかれる。
やっぱターゲット扱いしてないからだな。
気楽でいいんだけどね~。
――――
―――
――
テーブルに増える空いたグラス。
「カスミもいい加減
本気で男作れば?」
『えぇ!!
要らないよ!!
男なんて結局裏切るんだからさ。』
「だからさ~
男だってそんな奴ばっかじゃねぇって。」
しつこいよ!!!
お互いホロ酔い気分で言葉が飛び出す。
『慎也こそ早く彼女作れば~。』
「っせぇなっ!!
俺の事はいいんだよ。」
ちょっと沈んだ慎也の顔。
『なに、なにぃ~。
好きな子でもいる訳?』
「バーカ!!
いたらおまえの呼び出しに応じてないって。」
『あはは、だよね~。』
「いい加減
過去のトラウマから抜け出せよ?」
その言葉が痛くて
ビールを一気に飲み干す。
『…信頼出来ないうちは無理だろうなぁ。』
「おまえ他にも何か隠してるだろ?」
『そんな事ないよ~?』
笑って誤魔化す。
「おまえの笑顔は俺には通用しねぇっつうの!!」
『ちっ』
「舌打ちすんじゃねぇよ。」
顔を崩して慎也が笑うから
私も笑う。