【短編】君のすべて
「他の男にもう笑いかけんな。
甘い声だすな。」
『うん…クスクス』
「何笑ってんだよ」
ギューっと抱きしめながら
不機嫌な声が聞こえてくる。
『本当に独占欲強いんだね。』
「当たり前だろ。
ようやく手に入れたんだ。
誰にも触らせないし
ぜってぇ手離してやんねぇからな。」
慎也の背中に腕を伸ばし
強く抱きしめ密着する。
『でもね、慎也の気持ちが
変わっちゃった時は…
先に言ってね?』
裏切る前に言って?
その時は…―――
「変わらねぇよ。」
身体を少し引き離される。
『わかんないじゃん。』
「わかるんだよ。
どれだけ花澄への気持ちで
いっぱいだと思ってんだ。
俺をそこらの男と一緒にすんな。」
口角を上げ
フッっと笑った慎也の顔が近づくから
静かに目蓋を閉じる。
『いったぁ~い』
両頬を抓られる。
「不安になったらちゃんと言え。
1人で抱え込むな。
花澄ほど、目が離せねぇ奴はいねぇよ。」
その言葉に嬉しくて涙が溢れる…。
『慎也が…好きだよ』
抓っていた手が開かれ
両頬に添えられ
そのまま…慎也の顔がまた近づいて来る。
そのまま目蓋に…
頬に…
口唇に優しいキスが降り注ぐ。