【新装版】BAD BOYS
一体この人、椿のことをどんな目で見てるんだろう。
どう考えても彼はそんなタイプじゃないし、好きこのんで遊ばれに行くようなタイプじゃない。関係が発展したら面倒だからと、彼は自分よりも優位に立つ女の子とは絶対に遊ばない。
だから今まで、問題を起こさずに済ませてきた。
耳元で甘く囁くだけで、何とかなるような子ばかりを相手にしてきたから。
「まあ、なんでもいいや。
ちょっと今暇してる?付き合ってよ」
「え、」
「付き合ってくれなくてもいいけど……
そしたらノアさんに、この間椿とデートしてたこと、俺しゃべっちゃうよ?」
っ、この人、腹黒い……!
綺麗な顔でしれっと脅してくるんですけど……!
バレたらまずいと不可抗力に逆らえなかったわたしは、彼について向かったファミレスに入る。なぜ。
何かと思えば「好きなもの注文していいよ」だし。普通に晩ご飯を済ませる気の彼に合わせて、わたしもハンバーグのプレートを注文した。
いや、帰ってご飯作るのも面倒だし。
ここは女の子らしくパスタとかグラタンとか、ある程度悩むんだろうけど、残念ながらわたしにはそんな思考はない。
今食べたいと思ったものを素直に注文すれば、目の前の彼はふっと笑みをこぼす。
何を言うのかと思えば「なるほどね」とゆったり色気を振りまく彼。
「これは……
椿が一方的に、無意識に引っ掛かったのか」
「……何か言いました?」
「ううん、何も。
ノアさんと付き合ってるなんて、プライド高い美人かと思ってたけど。……案外普通だね」
「何気に失礼ですね」
美人、って言われたのにまるで褒められてる気がしない。
というかこの人、この間は女の子と仲良さそうにしてたのに、わたしに対してなんだか当たりが強くないだろうか。……口説かれても困るけど。