【新装版】BAD BOYS



ぽろぽろと紡ぐ言葉が、自分にも言い訳がましく聞こえて仕方ない。

「ふうん」と面白くなさそうな彼の声に、ひどく劣等感を感じるのはなぜなのか。……苦手、というよりも、嫌いだと思った。



明確に誰かのことを嫌いだなんて思ったことがないから、自分の中に芽生えた醜い感情に思わず眉間を寄せる。

それを自分への嫌悪だと受け取ったのか、「どうでもいいけどさ」と前置きした彼は。



「ロクな言い訳もできないなら、いっそ浮気してますとでも言われた方がまだマシ。

……本気でノアさんのこと好きなようには到底見えないんだけど」



どうして。

……どうしてまだ会って間もない人に、ここまで言われなくちゃいけないんだろう。



ノアの事情も、わたしと椿の間にある関係性も、なにも知らないのに。

まったくの他人に、どうしてここまで、踏み込まれなきゃいけないの。



「……、あなたに、何の関係があるの」



感情を、何一つ隠すこともせず。

不快感をすべて押し出して問えば、彼はふっと楽しげに口角を上げる。……ほんとうに、きらい、だ。




「きみなんでしょ?

『花舞ゆ』に溺愛されてる、おひめさまって」



「、」



ドク、と心臓が音を立てる。

頭の仲で警鐘が、うるさく鳴り響く。落ち着け。椿と仲が良いんだから、それぐらい知っていたって、何も問題はない。



ああ、でも、どうして?

その顔は。すべて知ってる、顔でしょう?



「改めて、自己紹介をしようか。

俺は藪雨 紫(やぶさめ しい)。椿と同じ天皇寺高校の2年で、年齢詐称してホストの仕事をやってるよ。そっちの源氏名は紫の月で、紫月」



ぐるぐる、余計な思考ばかりがまわる。

危険信号は、いつから、鳴ってた……?



「『BLACK ROOM』……直訳だと黒の部屋、だけど。俺らの間では、通称"パンドラの箱"。

──『花舞ゆ』反対組織の、メンバーだよ」



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