【新装版】BAD BOYS
微笑んでくれるけれど、生憎その優しさに触れる気はない。
最後の一口を食べ終えナイフとフォークをかちゃりと置いて、じっと視線を持ち上げ彼を見る。優しい表情を保ったままの彼に、また嫌悪感が増した。
「悪いけど、その情報は間違ってるわ」
「へえ? なら、正しい情報を教えてよ」
「わたしは『花舞ゆ』を捨ててない」
都合が良いと言われてしまえば、それまで。
だけど彼等がくれる言葉を、今だけは借りさせてほしい。必ずケリをつけて、「ただいま」と言える日が、来ると信じているから。
「……つまり、
俺らの敵に回る、って返事でいいんだね」
彼はまた、ふっと微笑むけれど。
その視線は凍てついたように冷たくて、まるで感情をうつさないようだった。……それでも。わたしの答えは、絶対に変わらない。
「好きに受け取ってちょうだい」
「……そ。
なら、とりあえずパフェ頼もうよ」
「ええ、いいわよ。
わたしストロベリーのパフェが良い」
「えー……俺チョコのほうが良いんだけど」
表面上は、穏やかな会話。
けれどお互いに爆弾を抱えて、会話してる。逸らさない視線が、ばちばちと火花を上げて。
ベルで呼び出した店員さんにストロベリーとチョコの間を取って言った「抹茶パフェで」の声が、見事に重なった。
……ああもうほんと、気にさわる。
「いいよ、奢ってあげる」