【新装版】BAD BOYS
・eight
・
「ふぁ、」
ねむ……、と。
まだ完全に覚醒しきっていない状態で、なんとか身体を起こす。スプリングを軽く軋ませて、まだ眠っているすみれを起こさないようにしながらベッドを出た。
残念ながら、俺は早起きが得意ではないのだ。
毎朝学校に行くときは母親に伝達を受けたすみれが「おにーちゃん起きてー」と起こしに来てくれるし、こうやって隣でまだ寝てるのはめずらしい。
それもそうだ、現時刻4時半。
あきらかに起床時間ではないそれに俺が起きているのも、ほかでもない修学旅行のせいだった。
「……だっる」
ぱっと目がさめるならまだしも、身体に怠さを伴う目覚め。
思わずその怠さに舌打ちしたくなりながらクローゼットを開けて、アイロンのあてられたカッターシャツをハンガーから外す。
俺の学校は、始業時間がちょっと遅めだし。
今日は起きたからいいとしても、明日明後日、明明後日……と宿泊で早起きする必要があるのは憂鬱でしかない。
……はなびが同じ学校だったら、ちょっとは、楽しいのに。
はやく会いたいな、と。恋人でもなんでもない彼女を想っているうちに、すっかり目が覚めた。
制服に着替え終えて、ドアノブに手をかける。
そのタイミングで「おにいちゃん」と甘い声に名前を呼ばれて、振り返った。
「……ごめん、すみれ。起こした?」
「んーん……おみおくり、するの」
「ああ、」
数日会えないのは寂しいから見送るって、昨日言ってたもんな。
大袈裟、と笑ったけど、どうやら本気だったらしい。
まだ寝てていいよと言ったものの、俺とは違い寝起きの良いすみれは、ぴょんと起き上がって。
「おはよぉー」と笑顔を見せてくれたのが可愛くて、彼女を抱き上げて部屋を出る。