【新装版】BAD BOYS



チッと舌打ちして、閉ざされた洗面所の扉を睨む。

っつうかいつも一緒にいんだし、着替えぐらいで恥じらう関係でもねえだろむかつくな……!



ようやく静かになったシイのスマホは、ベッドに放り投げられていて。

むかついたから、気づかれないようにこっそり電源を落としておいてやった。あとでスマホに触ったとき、焦ればいいのに。



何気なく触ったスマホの電源がいきなりつかなくなれば、誰だって焦る。

……なんつー地味な嫌がらせ。



『ふふ、楽しそうね椿。

すみれがすっかり拗ねてるわよ?』



「あ、ごめんすみれ」



忘れてた。電話繋がってんだった、と。

自分のスマホを見れば、母さんが今撮ったのか、頬をふくらませてそっぽを向くすみれの写真が送られてきた。……天使だ。



ほんと、俺の妹はかわいすぎて困る。




『それより、"はなびちゃん"って、』



「あああああああ、それは忘れていい……!」



とっさに叫べば洗面所から「椿うるさい」と文句が聞こえてきたけど、誰のせいだと思ってんだマジで。

彼女ならいいけど、俺が一方的に好きなだけではなびのことを色々聞かれるのは俺が困る。すっげえ困る。



『いや、そうじゃないのよ。

そのはなびちゃんって子、妹とかいるの?』



「……はなび一人っ子だよ」



なんで、と。

ちょっと拗ねるように言えば母さんは、「あら?」と不思議そうな声を出す。なんだその反応。気になるんだけど。



『すみれの通ってる保育園で、すこし前に見かけたのよ。

たぶん椿と同い年くらいの、"はなびちゃん"』



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