【新装版】BAD BOYS
え?とそれを聞き返せば、どうやら数日前、はなびはすみれの通っている保育園にお迎えにきていたらしい。
だけどはなびは一人っ子だし、妹や弟はいない。当然ながら兄や姉もいないため、その子ども、という可能性もない。
でも母さんによれば、はなびは自分よりもすこし年上の女性と、一緒にいたみたいだし。
はなびに年上の女の人の知り合いなんていたっけ?と、ぼんやり考えこんでいたら。
「椿、そろそろ集合時間になるよ。
制服のまま行くの? 着替えたら?」
「あー……ん、着替える」
私服に着替えたシイが洗面所から出てきて、時計を見れば確かにそろそろ集合時間だ。
すみれにもう一度謝って、時間があったらまた連絡すると電話を終わらせてから、その場で荷物をあける。
「椿おまえ、俺のスマホの電源勝手に切った?」
「ごめんな、むかついたから」
シイの発言を右から左に流して、考えるのははなびのことばかりで。
そういえばはなびがデートするのは土曜日なんだっけ、と修学旅行前に聞いた話を思い返す。
今日は、木曜日。
はなびは土曜の夜に話を切り出すつもりだって言ってたから、会えるとしても日曜の朝。俺が関東にもどれるのは、日曜日の夕方だけど。
もしあの人から『花舞ゆ』に関わる許可が出たら、日曜日は俺がたまり場に行くまで待っててくれるらしいし。
日曜の朝、どうなったのかだけは、先に芹が連絡してきてくれる。
「ほら椿、はやく行こ」
「わかってる。ちょっと待って」
「もう。置いていくよー?」
何かが、凄く引っかかるけど。大きなものを、見逃しているような気がするけど。
……頼むから、そんな勘は当たらないでほしい。