【新装版】BAD BOYS
なんだか、とても頼りない声。
どうも違和感はあったけど応答があることにとりあえず安堵して、「はなび」と呼び掛ければそれ以上返事はない。ただ無言で、オートロックの鍵を解除してくれた。
『……椿、どーなった?』
「……エントランス開けてくれた」
エレベーターに乗り込み、『3』を押して『閉』のボタンを意味もなく連打する。
音もなく滑らかな動きで3階に到着したエレベーター。勘だけで左右に分かれた道を進み、たどり着いた部屋のインターフォンを鳴らす。
カチャリ。
開いた鍵の音。だけど一向にドアが開く気配はなくて。
「……はなび?開けていい?」
声を掛けてから、ゆっくりドアを開く。
そして。彼女の姿を視線が捉えたと同時に触れた体温の低さに、喉の奥が引きつるような思いだった。──バタン、と、扉が世界を遮断する。
「っ……、」
キツく。俺の背中に腕を回して、キツく。
抱きついて、顔は見せないけど。彼女の格好は素肌にシーツを一枚纏っただけの頼りないもので、何かあったのは言われなくてもわかる。
「はなび、どした……?」
「っ、」
肩が、震えてる。
俺の前で弱さなんて見せたことのなかったはなびが、肩を震わせてまで、怯えて、泣いてる。
「……とりあえず、中入ってもいい?
ちゃんと聞くからゆっくり話そ、はなび」
薄暗い玄関じゃ、落ち着いて話せない。
空いた手で彼女の頭を撫でて、優しく声を掛ける。こくんと頷いたはなびはゆっくり離れて、泣き腫らした顔を隠すこともなく俺を部屋に上げた。