【新装版】BAD BOYS
ずっと、思ってたことがある。
あの人ははなびのことを手放すつもりはないって言ってたし、はなびだってずっとあの人のことが好きなのに。
どうしてか、ふたりの感情は繋がってないみたいに、いびつで。
でも今、やっとわかった。ふたりとも、お互いに甘えきってるからだ。甘え、と言えば聞こえはいいけど、今やもう、依存でしかない。
「椿が知らないだけで、っ、わたしは……」
「いい加減にしろ、はなび」
こんなにも怯えてんのに。
ありえないくらいに震えながら、なんでそんなことが言えんの。
「……そうやってお前が甘やかすから、
いつまで経ってもお前が傷つくんだって」
ぎゅうっと、彼女を抱きしめる。
触れた腕が冷たくて、冷えきってて、温度のないそれがたまらなく怖かった。抱きしめて、大丈夫だよって囁いて、安心させるように。
「はなび。
……好きなだけじゃ、どうにもなんねえよ」
「………」
「本気でずっと一緒にいたいんだろ?
なら……そんな顔して泣いてる場合じゃない」
はなびの手が、弱々しく俺の服をにぎった。
控えめなそれが、愛おしいと思う。俺にしとけばいいのに、って。そう思わないわけじゃねえけど。むしろ泣くぐらいなら、俺がそばにいてやりたいけど。
「……好きな人の前で無理して笑顔でいても、意味ねえし。
泣くぐらいつらいなら、別の男にしとけ」
「……、うん」
俺にしとけ、とはさすがに言えなかった。
それでも頷いたはなびをしばらく抱きしめていれば、泣き止んで落ち着いた彼女が「あのね」と顔を上げる。