【新装版】BAD BOYS
「ごめん、なさい。
……みんなに心配かけて、こうやってわざわざ会いに来てくれて。迷惑、だったでしょう?」
「……これがお前じゃなかったら、な」
冷静になろうと躍起になっているようで。
俺からそっと距離を置いた彼女に、俺も触れることはしなかった。淡くて、なぜか薄ら甘くて、だけどひどく哀しさを助長させるような空気。
「修学旅行から、帰ってきたばっかりよね?
本当にごめんね、椿。わたしなら平気だから」
「……とりあえず、許可、出たんだろ。
あいつらの前に、顔出してやって。本当に会いたがってたから」
「……、そう、ね」
許可が出たことと、あの人のそばにいなきゃいけないこと。
それらは別物で、切り離して考えてしまえば驚くほど簡単な事実に思えるのに。はなびにとっては、そういうわけにはいかないらしい。
「椿、」
「ん?」
「……ううん、なんでもない」
ふるふると、はなびは首を横に振る。
何か言いたそうだったけど、聞いても答えてくれないだろうなと容易に想像がついた。「そっか」と一言で済ませれば、彼女ははっとしたように俺の服を握って。
「ごめんね、来てくれたのにロクにもてなしてなかった。
お茶淹れるから、ちょっとゆっくりしてから帰って」
「……気ぃ遣わなくていいのに」
「気を遣うどうこうじゃなくて、わたしのプライド的に許せないの。
ソファ座ってくれていいから。ね?」