【新装版】BAD BOYS
「ノア、」
「ん……?」
「……ぎゅ、って、してほしい」
……うん。何言ってるの、わたし。
ここ満員電車の中なんだけど。思いっきり公共の場なんだけど。いや、すでに密着して十分イチャついてるように見えるだろうし、実際ちょっとそういう気分、だけど……!
自分自身の発した言葉にあたふたしていたら、ノアがふはっと小さく吹き出して。
それから周りが嫌がらない程度に腰に回した両腕を、そっと自分側へと引き寄せた。そうすればさらに密着して、抱きしめられる。
「これで満足した?おひめさま」
……ノアの甘さに、酔いそうになる。
っていうか、たぶんもう酔ってる。じゃなきゃ「ぎゅってして」なんて口走ったりしないし。
「……ぜんぜん、足りない」
「、」
「足りないから、いっぱい甘やかして」
ああもう恥ずかしい。
……でも、すごくしあわせなの。ノアとこんな風に出掛けられるのが嬉しい。しかも彼が仕事を詰めてくれたおかげで、今日は泊まりだ。
つまり、明日の朝までずっと一緒。
何よりもその事実が、わたしを浮かれさせてる。
「甘やかしてあげる。……いっぱい」
ノアはわたしのものだ。わたしも、ノアのもの。
『花舞ゆ』のことを思うと多少は切ないけれど、今はただ、この時間に酔うことを許して欲しい。