【新装版】BAD BOYS
「な、っ……んで、わたしのこと見てるの、」
てっきり一緒に水槽を見てくれてるんだと思ってたのに。
彼の視線の先に気づいてしまえばとてつもなく恥ずかしくて、不可抗力に頬を染めるわたしを呑気に見やるノア。
「いや、案外はしゃいでるから。
はなび、水族館とか結構好きなんだね」
……お子様で悪かったわね。
そりゃあノアが水族館なんかではしゃいだりするとは思えないし、どう考えたって彼は保護者ポジションだけれども。
なんとなく癪で、ジト目で睨んでみるけれど。
まるで効果なし。「かわいいよ」なんて完全に子ども扱いされてしまっては、もはや言い返す気力もない。
「……釣り合えるようになりたいのに」
「はなびは既に、十分すぎると思うけどね」
その返答が大人だってこと、きっとノアはわかってない。
むっと拗ねるようにしつつ、視線で泳ぐ魚を追う。様々な大きさの魚がこの水槽にはいるみたいだけど、小さい魚が食べられたりしないんだろうか。
……いや、食べられないから同じ水槽の中にいるんだろうけど。
「……わたしって、冷めてる?」
ぽつり。1階で楽しげに写真を撮るカップルを見てつぶやけば、ノアがつられるようにしてそっちを見る。
さっき散々イチャイチャしていたわたしが言えたことではないけれど、あちら側は典型的な仲良しカップルだ。
「冷めてるかどうかより……
単に、相性の問題だと思うけど?」
「……相性、ね」
「俺は写真撮るの好きだし、はなびのことを撮るのも好きだけど。
俺自身はあんまり写真撮られるの好きじゃないからね」