【新装版】BAD BOYS
だからああいうのは向いてないよ、と。
わたしを見るノアの視線があまりにも甘くて、喉の奥が詰まったように苦しい。でも、この息苦しさは嫌いじゃない。
「なら……冷めたままでも、いい?」
「俺への気持ちが冷めてないなら、なんでも」
……今日ほんとに、糖度、高い。
また流されてしまいそうなのが嫌で甘さを逃すように、ノアの手を引く。まだたくさん時間があるのに、こんなに甘やかされたらわたしの心臓がいくつあっても足りない。
「ノア、このキーホルダーかわいい」
「おしゃれだね。欲しい?」
「ノアもつけてくれる?」
水族館を一通り回って、イルカショーを見終えたあと。奥にある広いショップ内で、ペアのキーホルダーを指さして甘える。
ノアは「いいよ」とそれを手に取って、わたしのマンションの合鍵につけると言ってくれた。
「なら、わたしも鍵につけようかな……」
「既にキーホルダーつけてなかった?」
「うん、昔もらったのが可愛くてつけてるの」
お気に入りだからと何気なく言っただけなのに、ノアはなぜかじっとわたしを見つめてきた。
それから、「アレ染か椿からのもらいものでしょ?」と聞いてくる。
……どうしてその選択肢なの。
まあ本当に昔椿にもらったものなんだけど。ノアと付き合う前だから、どうこう言われても困る。
「……、まあいいか。
そうだ。はなび、紫月と知り合いなんだって?」