【新装版】BAD BOYS
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「案外楽しめたみたいでよかったよ」
向かい合って席についたノア。
放たれた言葉に、思わずわたしの口角も上がる。水族館なんてひさしぶりだったけど、とても楽しかった。ショップでペアのキーホルダーも買ってもらっちゃったし。
あの水族館は、広い公園の敷地内にある。
水族館を出てから、綺麗な花がたくさん咲く公園の中をノアとのんびり散歩したのだけれど、それがなんだか楽しくて終始ご機嫌だったわたし。
そのご機嫌なテンションを保ったままランチのために訪れたのは、小さなカフェ。
なんでも、女性客で賑わうこのカフェのマスターとノアは仲良しらしく。
さっき席まで案内してもらうまでの短い間、ノアはそのマスターと楽しそうに会話していた。
……今に限ったことじゃないけど、ノアは人脈がやたらと広い。
ホットサンドをふたつ、わたしはキャラメルマキアート、ノアはコーヒーを注文したところで。
案の定まわりの女性客から向けられる視線を物ともせず、ノアは「はなび」とわたしを呼ぶ。
ちょっとだけスマホの通知を確認していたところだったから上手く声を返せずに、視線だけを持ち上げた。
それにしても送られてくるメッセージの数が凄い。『花舞ゆ』のメンバーもそうだけど、桃がやたらと送ってくる。メッセージ上でも桃はうるさい。
「まだ少し早いけど。
去年はまだ遠距離だったし、今年のはなびの誕生日は俺が一緒に過ごしていい?」
わずかに、首をかしげるノア。
それだけでまわりの女性が色めき立ってわたしが揺らされること、全部わかってやってるなら相当タチが悪い。自覚がないなら、それはそれで腹がたつけど。
「一緒に、いてくれるの……?」
つらつら脳内で述べた文句とは裏腹に、結局わたしは甘えてしまう。
優しい微笑みで肯定してくれるノアにこくこくと頷いて、誕生日は彼が一緒に過ごしてくれることになった。
「まだ具体的な日程はわかってないんだけど、はなびの誕生日前にはテスト終わるはずだから。
俺も夏休みだろうし、何するかはゆっくり決めようか」
したいことある?と聞いてくれるノア。
わたしの誕生日は7月30日で。夏休みともなれば、どこに行っても人は多いだろうし。
今日もいい思いをさせてもらってるのに、頻繁にデートしてもらうわけにもいかない。
お家デートがいい、とぼそりと告げたそれには、彼を独占したいというヨコシマな思いも混ざっていたのだけれど。