【新装版】BAD BOYS
・two
・
「ただいま〜」と。
真顔で"きもちわるい"と言われた声を、広いガレージの中へと投げる。どれぐらい広いかって聞かれたら、奥にいるヤツの顔が見えないぐらい。
……いや。生活には困らない程度、まで俺の視力は落ちてるから、役に立たないなこの表現。
『花舞ゆ』の現メンバーは全員で300人ぐらいだけど、それが余裕で入るぐらいには広いと思ってもらえれば良い。
おかえりなさいの声が至る所からかえってきて、「デートですか?」「まあねえ」と、いつものやり取りを済ませてから2階に上がる。
俺が遅い時間に来る。イコール、デートだと思い込んでるヤツが結構いるけど、べつにそういうわけじゃない。
……いや、毎日のように女の子といるけど。
なんて心の中で言い訳しながら訪れたここは、何を隠そう『花舞ゆ』のたまり場だ。
「おかえり、つーちゃん。
昨日はぶつぶつ言いながら帰ってきたけど、今日はご機嫌さんなの?」
「ん、俺今日機嫌いーの」
もともとは1階しかなかったガレージの上に、何個か前の先代たちが作り足した2階。
端に階段がついてて、1階の半分ぐらいのスペースしかないけどそれなりに快適。ひとつ言うなら壁がないから、声は下に筒抜けだけど。
「つーちゃんがご機嫌ってことはー。
相手の女の子がめずらしくタイプだったんだ?」
「……まあ、そんな感じだねえ」
あながち間違ってねえから、特に否定しないでおく。
冷蔵庫を開けていたら、いまの返事をちゃっかり聞いていたのか、階下から「えっ!?」とおどろきの声が上がった。
「椿さんがタイプって認めた……!めずらし!」
「あの椿さんのタイプに合う人とかどんな人だよ……
椿さんのタイプって、"はなびさん"じゃん?」
「ばかっ、はなびさん彼氏いるだろ!」
……思いっきり聞こえてんだけど?