【新装版】BAD BOYS
「勝手に悶々としてろ」
聞こえないのにそう吐き捨てた椿は、わたしのスマホに再度芹からかかってくる電話を完全にスルー。
「そんなことより」と甘やかに微笑む彼の違和感を拭いきれなくてカラコンを外してほしいと言えば、彼はあっさり元のブラウンの瞳を晒した。
「……やっぱりそっちの方がいい」
「ふ。ありがと。
……で、本題。明日ってことは、月曜だしたまり場行くのは放課後だろ?俺は振り替えで水曜から学校だし、予定もねえから一緒に行こうか」
「……うん」
「迎えに行ってやろうか?」
聞かれて、すこし考えてから、いつもの最寄駅で集合することに決めた。
駅の方が椿の家よりもたまり場に近いし、学校帰りにそのまま駅前で落ち合って、一緒にたまり場へと向かう。
「ん、了解。
んじゃあ、駅着く時間は明日にでも連絡して」
「うん、」
「……それじゃ、すみれが寂しがってるだろうから俺は帰るけど。
なんかあったら、いつでも連絡しろよ」
来てやるから、と優しい椿にお礼と、迷惑をかけてしまったことを謝って、玄関先で彼を見送る。
再びひとりになった部屋で、カップを片付けてからスマホに触れた。
『もしもし、はなびちゃん?』
「千秋さん、こんばんは。
すみません、昨日は晩ご飯までお世話になっちゃって。ありがとうございました。……え、っと。実は今度、話したいことがあって──」
彼女の左手薬指に嵌められた、永遠を誓う指輪。
ノアの手に同じものがあるのを見たとき、未来はあきらめた。──見て見ぬふりは、もうおしまいだ。