【新装版】BAD BOYS
本当に驚きを隠せないでいるわたしに、ふっと頬をゆるめて楽しげに笑う椿。
カラコンもしていないせいで、落ち着いたその風貌に、なんとなくドキマギしてしまう。
「なんで、急に染めたの……?
あれからずっと、あの色だったんでしょう?」
「ん〜、なんか……吹っ切れた、っていうか。
女子って失恋したら髪切るじゃねえの」
「ああ、」
「そんな感じ。
さすがにばっさり髪切る勇気はなかったから、色変えるだけで落ち着いたけど」
「ふふ、切っても似合うと思うけど。
わたしはちょっと長めの髪、椿らしくて好きよ」
そういえば、本命の子がいるって言ってたけど、「吹っ切れた」って、その子に関わる何かがあったんだろうか。
……ん? あ、れ?
「そういえば椿、説教されるんだっけ」
「あー、マジで嫌だなそれ。
まあ俺が、勝手にはなびと密会してたのが悪いんだけど」
「……デートまで、した、から」
椿が髪を染めたのは、今日で。
昨日会ったときは、いつも通りだったわよね……?
「もう、こうなったら開き直って自慢してやろうかな。
はなびのこと捕まえて、デートしたって」
それなのに、吹っ切れた、って……
そんなまさか、と。ある仮説が浮かんできて、いま隣を歩いていることがひどく落ち着かない。いやいや、そんな、まさか。
でも、デートしたときの発言、とか。
彼の言動とか、昨日の「もしも話」、とか。