【新装版】BAD BOYS
「ね、ねえ。椿」
「……ん?」
たまり場は、すぐそこ。
近づく距離にわたしが不安になっていると思ったのか、彼はきょとんとしているけれど。
「椿、もしかして……わたしのこと、」
好き……?と。
言葉にしてから、勘違いだったら恥ずかしすぎると後悔したけれど。きょとんとしたままの椿は、「何言ってんの」と笑うだけ。
「好きだよ。知ってんだろ?」
「、」
……そう、じゃ、なくて。
わたしが聞きたかったのは、本命の話、で。わかってほしかったのに、伝わらない。恋愛感情で、と聞き直す勇気も萎んでしまって、結局「うん」と誤魔化してしまった。
いや、でも、もし。
もし……好きだって、言われたら。
「ほら、先入りな」
困るのは、わたし、だ。
答えてくれなくてよかったのかもしれない。
そう考えて、背中を押されるとガレージにゆっくり足を踏み入れる。その瞬間、パンッと勢いよく音がして、ひらひらと視界を紙吹雪が舞った。
「え、」
瞳におさめたのは、あの頃と変わらなくて、でも断然大人っぽくなったみんなの姿。
いくつもの「おかえり」の声に、視界が滲んだ。