【新装版】BAD BOYS
芹は呆れた顔をして、それから「知らねーよ」とグラスに入ったジュースに口をつける。
誤魔化しているようには見えなくて、どうやら本気でわからないみたいだ。
「警察の関連?」
「いや、警察も調べられねーんだとよ。
噂じゃ、御陵組が関係してるってのもあるからな。首突っ込んだら、めんどくせーぞ」
御陵、組。
いまや一般庶民でも当たり前に聞くその名前。有名な日本随一の極道。確かにそんなものが関わっているなら、首を突っ込みたくは無い、けど。
「なんか巻き込まれてんのか」
「そういう、わけじゃ」
「でも、お前から聞いてくるってことは何かしらそういうのだろ。
……お前に勝手に動かれたらこっちも困んだよ。何が気になんのか、はっきり言え」
芹は人の感情に敏感だと思う。
確信を持った口調に逃れられないと判断して、ふわりと揺れる"彼"の髪を見つめながら、ゆっくり口を開いた。
芹のことも、わたしは絶対的に信頼してる。
大丈夫だ。……だってこの人は。
「椿と同じ高校で、仲良しの子に……
藪雨紫、っていう男の子がいるんだけど、」
椿と、すごく仲が良い。
だから椿が危険なら、間違いなく協力してくれる。芹は、誰よりも『花舞ゆ』のみんなが好きだ。
「その子が、その組織のメンバーらしくて。
……椿に危害を加えようとかそういうのは、ないみたいなんだけど」
ずっとコソコソ話していたら、怪しまれる。
手短に彼から直接聞いたことを伝えれば、芹はチッと小さく舌打ちしてから、「あとで珠紀に調べさせる」と言ってくれた。
情報通で、機械にも詳しい珠紀。
昔から度々調べものをしてくれてはいるけど、あの魔王様が今回のことに、どれだけ協力してくれるだろうか。