【新装版】BAD BOYS
・thirteen
・
「っ、頼むから、マジで記憶から抹消して……!」
「いや、きっちりみんな聞いたから」
はなびがたまり場に、顔を出してくれて。
ひさしぶりのその空間を楽しんだ彼女は、数分前に「送る」と言った染と帰っていった。
頻繁に、は無理だけど。
ノア先輩の様子を見つつ、一応、また来てくれるらしい。それはもちろん嬉しい。嬉しいんだけど。
正直に言おう。
たまり場ではじめにクラッカーを鳴らした時。あれにはちゃんと合図があった。俺がここへ来る途中で芹に電話をつないでいたから、だ。
はなびをガレージの中に勧めたのを合図にして、クラッカーが鳴らされた。
だけど俺が言いたいのはそれじゃない。たまり場の少し手前で、俺は芹に電話をかけ、スマホを手に持ったまま歩いていた。
俺とはなびの、ここへ来る途中の会話を思い出してほしい。
はなびは唐突に俺を呼んで、あろうことか「わたしのこと好き?」と聞いてきた。
そう。
この会話、実は芹のスマホでスピーカーを通し、たまり場にいたメンバー全員に、しっかり、それはもうしっかり、聞かれていた。
……本当は俺に、恋愛感情でわたしのこと好き?と、はなびが聞いてきたことはわかってる。
露骨にアピールしてるから、気づかれるだろうな、とはある程度思っていたし。
聞かれたら聞かれたで、もういっそ「好きだよ」って言ってもいいと思ってた。その覚悟で、俺も髪色を変えたわけだし。
だけど、だ。……さすがに、全員に聞かれている状態で、告白できなくて。
ああやって誤魔化した俺のことを、珠紀と芹がずっとネタにしてくる。
おかげで魔王様は終始ご機嫌だけど、いろんな感情がごちゃまぜになって、俺はいますぐこの場から消えたい。
「言えばよかったじゃん、好きだよって」
「うるさい」
ミュートにすればよかったんだろうけど、あまりにもはなびの発言が唐突すぎて、思わず頭の中が真っ白になった。
おかげで焦りすぎて、あんな答えになったわけだけど。