【新装版】BAD BOYS
「……え」
はなびの表情が、固まる。
思わずどちらともなく立ち止まって、見つめあう。俺を見つめた彼女を見て、カラコン外してから言えばよかったなと些細なことに後悔した。
「え……? え、冗談?」
「んなわけあるか」
「あ、もしかしてこの間の染と一緒?
言うだけ言って、返事はいいっていうあれ?」
よっぽど、焦っているのか。
落ち着かない様子で逸らされる視線と、余裕なさげな早口の言葉。それでも誤魔化しようのないくらい赤い頬を見たら、なんだか満足した。
熱くなった頰に、つないでいない方の手で触れる。
ぴくりと肩を揺らした彼女に「俺のことちゃんと見て」と言えば、ひどく恥ずかしそうに俺を見るから。
「俺は染みたいに、「ごめん」は欲しくない」
「っ、」
「染には及ばねえけど、ずっと好きだった。
……だから今、あの人から奪いたくて仕方ない」
意地悪と甘さのジレンマに、追い詰めたくなる。
手が早いって散々言われてきたけど、これでも本命に対しては気長に待った方だ。この間も一瞬弱った彼女に迫られかけたけど、我慢して。
結局俺のせいで泣かせてしまったけど、キスもしてないし、触れてもない。
まだはなびは、あの人だけのものだ。
「……なあ、奪っていい?」
こころも、からだも、ぜんぶ。
俺だけで、染まってしまえばいいのに。