【新装版】BAD BOYS
「っていうか、タイプも理想も好きな人もはなびならもう仕方ないけどさ。
椿って、ちょっと夢見すぎじゃない?」
「……仕方ない、って言ったあとに貶すの何なの?」
自分でも理想高いな、とは思うけど。
これに関してはもう仕方ない。いつだって俺と素で向き合ってくれる女の子ははなびだけで、じゃなきゃ、あんなふうに話せない。
はなびがきもちわるい、って言ってたみたいに、俺の素の話し方は間延びしない方だ。
もちろんここのメンバーのことは信頼してるけど、昔からある、そこはかとない境界線を引くための仮面が消えないだけ。
稀に素も出るけど、はなびとふたりで話している時は、完全に素だ。
その違いをほかのメンバーも知ってるし、「ふぅん?はなびだけ特別なんだ?」と意地悪く珠紀に言われるくらいには、俺はわかりやすい。
「あんな"とくべつ"な女の子、ほかにいないよ?」
……知ってる。
染が俺らのトップになることがわかってたから。はなびが、その幼なじみだったから。染の特別な存在だったから、俺らの特別でもあった。
同性からも異性からも認められるほど美人だし、俺の理想が高いと言われる理由もそれ。
はなびに勝てる女の子、なんて。俺はまず見たことがない。
「ふふ。
はなちゃんは、つーちゃんにだけじゃなくて、ぼくらにとっても特別だもんねー」
にこにこ。笑って、そう言うのは三好 穂 。
俺のことを唯一名前以外で呼ぶヤツで、可愛げのある自分のキャラを作ってるわけじゃなく、これが素だからすげえなって純粋に思う。
男なのになぜか穂には似合う甘いミルクティー色の髪。ゆるくカーブした毛先はヴァイオレット。
……俺が言えたことじゃねえけど、ここの奴らって真面目な髪色いないな。
染は「染めるのがめんどくせえだろ」って理由で黒髪だけど、一見真面目な珠紀だって黒に近いネイビーブラック。
あと、今ここにいねえけど『花舞ゆ』現幹部、と呼ばれる男がもうひとり。
「あー、ったく暑ぃな。ただいま」
……あ、タイミングよく、帰ってきたな。