【新装版】BAD BOYS
短く答えて、電話を終わらせる。
ベッドに寝転がってスマホを触っていたら、とたとたと部屋の外から階段をのぼってくる足音。間違いなくすみれだ。
「おにーちゃーん」
ドアが開くと、予想通り駆け寄ってきたのはすみれで。
ベッドによじ登ってきたかと思うと、「ごはんだよー」と俺の顔を覗き込んだ。
どうやら俺を呼びに来てくれたらしい。
……かわいいな、ほんとに。
「きゃーっ」
思わずぎゅうっと抱きしめてごろんと寝返りを打てば、楽しそうなすみれ。
別に遊んでるわけじゃねえんだけど。ちゅ、と額にキスを落とせば、「ちゅー」と俺の頰に同じようにキスしてくれた。天使だ。
あと10年ぐらいしたら、すみれにも彼氏とかできるんだろうか。
……いや、これだけ可愛いんだから絶対できる。モテるに決まってる。
「すみれ」
「なぁに、おにーちゃん」
「……あとで一緒にお風呂入ろっか」
「……! はいる!」
身体を起こして、すみれを抱えたままベッドをおりる。
体勢を変えたことで落ちそうな彼女を抱えなおしてから部屋を出ると、ご機嫌なすみれは俺の首裏に腕を回した。
一緒にお風呂入るのひさびさだもんな。
すみれは甘えてくれるしわがままも言うけど、感情に聡い。だから俺の迷惑になるようなことは絶対にしない。俺が考え事してる時なんかは、甘えてくることもなかった。
今日だって、早く帰ってきたのに電話してるからと部屋には入ってこなかった。
素直に育って欲しいとは、思うけど。まだ幼いすみれが我慢するような子になってしまったのは。まぎれもなく、俺のせいだった。