【新装版】BAD BOYS



「……あれ。椿、寝てなかったんだ?」



「んー……

さすがに子どもと同じ時間には寝れない」



晩飯のあと、約束通りすみれと一緒に風呂に入って、ドライヤーで髪を乾かしてやって。

散々構ってやって寝かしつけたのはいいけど、さすがに同じ時間には眠れない。買ったまま読んでいなかった小説を持って、リビングへとおりてきた。



母さんは風呂らしいし、リビングには俺と父さんだけ。

本を持ってきたのはいいけど読むかどうかは別問題で、見るわけでもないテレビをつけてバラエティ番組をなんとなく目で追う。



「……椿、髪染めたんだね」



「はは、いまさら?

もう染めてから2日ぐらい経つけど」



「……なんかあった?」




聞かれて、口を噤む。

「なんも」と一言返したけど、そんな答えで納得してないってことはわかってる。……曖昧、だ。



俺は父さんのことを嫌いだとは思わないし、そんな父さんと再婚した母さんのことももちろんそうは思わないけど。

俺とこの人は、やっぱりまだ、他人だから。



親子らしい関係を築こうとはしても、そう簡単にはいかない。

すみれの父親で、俺の父親でもある。だけど戸籍上の話と、そこにある関係性は同じじゃない。俺が幼かったらよかったのかもしれないけど。



「……椿」



「だいじょうぶだって」



「……椿にそんな顔させてるのは俺でしょ?」



「っ、違……」



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