【新装版】BAD BOYS



とっさに出した否定の声が予想以上に大きくて、ぱっと口を閉ざした。

本当に、俺はこの人を嫌いだと思ったことはない。むしろ優しくて頼りになるこの人は、どこからどう見たって、いい父親だった。すみれの父親がこの人でよかったって、そう思ってる。



「そうじゃ、ない」



はなびに好きだって言えなかった理由は、フラれるのが嫌だっていうのが大きかったけど。

本当は、それだけじゃなかった。



「父さんは何も悪くない。……俺が、」



あれだけ仲の良かった両親は離婚した。そして今も仲は良い。

なのに母さんがいま大事に想ってるのはこの人で、その感情の移り変わりに、俺がついていけなかった。



「俺がただ、弱かっただけだよ」



もし、はなびに好きって言ったとして。

いくら終わりのこない感情だと思っていても、もし途中でほかの誰かを好きになってしまったら。その感情が終わってしまったら。




そう思うと。

好きと伝えることに、とたんに臆病になった。



だからもし、はなびが先輩と付き合ってなかったとして。

ずっと彼氏なんていなかったとしても、俺は好きって言えなかった気がする。今でこそ、4年分の想いを伝えられるようになったわけだけど。



「俺のことちゃんと考えてくれてありがと。

……俺の父親に、なろうとしてくれて」



「椿、」



「これでも俺、父さんのこと結構好きだよ」



そう伝えれば、髪をくしゃくしゃと撫でてくれる。

うわべの言葉を紡ぐのは慣れたものだけど、俺もどちらかといえば本心に対して口下手な方だから。お互いに不器用だ、たぶん。



「椿のことも、

ちゃんと俺の大事な子どもだと思ってるよ」



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