【新装版】BAD BOYS



それでも言葉にしなきゃ伝わらないことは、山ほどある。

言葉にしたって伝わらないことがあるのに、言葉にすることに臆病になってたら、いつまでたっても伝わらない。



「ん、知ってるよ」



ふっと笑みをこぼして、手で髪を簡単になおす。

そこからはもう、重い話とかそういうの、する必要もないから。リモコンでテレビのチャンネルを、適当に変える。



「なんか映画やってる。父さんこれ知ってる?」



「ん? ああ、これの続編そろそろ公開されるよね。

面白いよ。まだ序盤だし見てみたら?」



「洋画のラブシーンほど、

親と見て気まずいものってないと思うけど」



「椿でもそういうの気にするんだ?」




楽しげに笑われて、「俺のことなんだと思ってんの」と小さくこぼしてから、ソファに深く身を沈める。

ぴろんとスマホがメッセージを受信したことに気づいて手を伸ばすと、めずらしく染からの連絡。



何かと思えば7月後半の予定を、ざっくりとでいいから教えて欲しいらしい。

はなびの誕生日プレゼントを買いにいく約束もあるし、俺らだけじゃなくほかのメンツの夏休み開始の日なんかもチェックして纏めてくれるのは染だ。



去年はカレンダーにご丁寧にも、どの学校がいつから夏休みに入るのか、と。

俺ら5人がたまり場に来れない日を、ぜんぶ書き込んでくれてたし。まじめだな。俺ら『花舞ゆ』を仕切るトップのくせに。



「そうだ、今年の夏休み家族旅行行こうか」



「え、いつ?」



「8月に入ってから。

フリーランスで仕事してるからお盆なんかの人が多い時は避けて行けるし、すみれも大きくなったからね。でも来年はやめた方が良いでしょ?」



「……?」



< 208 / 463 >

この作品をシェア

pagetop