【新装版】BAD BOYS



来年って何かあったっけ、と。

思ったことが顔に出ていたらしい。父さんはふっと笑って、「椿が受験生だから」と口にした。



……ああ、そうだったわ。

俺来年受験生だった。すっかり忘れてたけど。



「だから今年にしようかなって話してて。

……あ、でも椿が行きたくないならいいんだよ」



「いや、べつにいいけど」



「ほんと? じゃあ、また日程決めようね」



すみれが幼かったから、そういえば今まで家族でどこかに行くっていうのはなかった。

俺は基本家にいないし、俺を抜いて3人で遊びに行くか、父さんとすみれがふたりで出掛けるかっていうのが定番になってて。



言われてみれば、

すみれとどこかに遊びに行った記憶がない。




「楽しそうね。なに話してたの?」



ガチャッと脱衣所の扉が開いて、風呂上がりの母さんが顔を覗かせる。

その表情がどことなく嬉しそうで、俺と父さんが上手くいくのか、母さんなりに心配してたのかもしれない。



「家族旅行の話。

椿も一緒に行ってくれるみたいだよ」



「あら、ほんとに?

ふふっ、椿ってば最近すみれに甘いわね。一緒にお風呂入ってるとき、ずーっとすみれの楽しそうな声聞こえてたわよ」



「お兄ちゃん大好きだもんね、すみれは」



……石鹸でシャボン玉つくって、一緒に遊んでやってただけなんだけどな。

あんなのではしゃいでくれるんだから、すみれはまだまだ子どもでかわいい。



「ねえ椿、もしかして最近彼女できた?」



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