【新装版】BAD BOYS



階下でボヤくのが聞こえたかと思えば、俺と同じように「おかえりなさい」の声を受けて上がってくるソイツ。

一樺(いつか) (せり)。この中じゃいちばん髪色が派手で、金髪ってだけでも目立つのに右サイドには赤と青のメッシュ入り。



「おかえり芹ちゃん。なんか情報あったー?」



「あったらここに帰る前に連絡してんだろうが。

何もねーよ。相変わらずココは暇してんな」



「暇してるっていうか、平和だよねー」



「まあ、ゴロゴロ喧嘩するような案件転がっててもめんどくせーけどな」



冷凍庫からいつも食べてるソーダアイスを取り出して、どかっとソファに座る芹。

この街に長年ある『花舞ゆ』。『花舞ゆ』出身のメンバーは結構いるもんで、当然現役の警察にだって数人いる。



だからこの地域の治安のこととか、最近あたりで起こったことを、あくまで仕事に差し支えない程度で2週間に1回教えてもらう。

大体は何もねえから人数割いたって無駄だし、行くのは交代制で、今回は芹だったというわけだ。




「それにしても、最近平和すぎない?

前は学生同士の喧嘩の話とか、いくつかあったじゃん。それもなし?」



「ナシ、っつーか、目立つことできねえだろ今」



「……ああ、御陵(みささぎ)組の影響ね」



御陵組。日本じゃ有名すぎる、その組織。

北海道東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州沖縄。全国6カ所に拠点を置き活動する、日本随一の極道だ。



なかでも関東が最大の拠点で、残り5つを「御陵五家」なんて呼んでる。

そんな御陵組の一番トップの男が、つい最近変わったらしい。



これはあくまで一般庶民の間に転がる噂だが、すこし前にトップを退いた男には、娘が一人だけ。

それを見かねて娘を結婚させ、さらなる跡継ぎも無事に生まれた。その孫が成人したとかで、ついにトップの座を婿に譲ったらしい。……というものだ。



真相はもちろんわかんねえし、俺らに直接関係があるわけでもない。

でも今の現トップがかなり切れ者だとかなんとかで、関東一帯の夜間の取り締まりがかなり強まった。



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