【新装版】BAD BOYS



髪も染めたし、と。

聞いてくる母さんに「できてねえけど?」と言えば、じっと俺を見つめてくる。



「……じゃあ好きな子といい感じ、ってところかしらね」



「……いい感じって」



「好きな子にキスでもしたの?

そんなことで浮かれちゃうんだから、案外ピュアよね椿」



「いやそこまでいってな……、」



いってない、と言いかけて。ほぼほぼ母さんに言われたことを肯定してしまったことに気づき、ぱったり黙り込む。

そんな俺を見て「やっぱ青春か」と楽しそうに笑うのはやめてほしい。息子で遊ぶなよ。



っていうか、なんで色々とバレて……と。

俺とよく似たブラウンの瞳をじっと見上げれば、それに気づいたらしい母さんは。




「最近椿、かっこよくなったから」



そう言って、なんの恥ずかしげもなく俺を褒めた。

……かっこよくなったってなんだ。いや、かっこいいって言ってもらえる機会は多いけど、かっこよくなった、って。しかも母親に。



「彼女になったら紹介してね」



それなら紹介できそうにないな、と苦笑する。

これ以上深く聞かれるのも嫌で、適当に返事して会話を終わらせた。……そのタイミングで。



「……、はなび、」



彼女からスマホに着信が入って、「おやすみ」とそそくさリビングを去る。

さすがに両親の前ではなびと電話する勇気はない。



……部屋を出るときにやたら生温かい視線で見送られたから、たぶん気づかれてるだろうけど。



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