【新装版】BAD BOYS
まぎれもなく、『花舞ゆ』のみんなを想った言葉だった。
仲が良い椿には、重い事情もないけれど。椿よりも大きな事情を抱えた子がいることは、わたしだって知ってる。
だから居場所を求めてくる子が、『花舞ゆ』には多い。
幼い頃には小学生なんかを呼んでいたあれも、いまはもうなくなった。つまり今あの場所にいるのは、幼い頃から『花舞ゆ』で育った子か、もしくは。
「だから曖昧な『不良組織』は嫌いなんだよ。
所詮救えもしないのに、なんとでもなると思ってる」
傷を癒す居場所を、求めている子。
そのどちらかでしかなくて、新しく入ってくるメンバーは当然、全員が後者だった。
「挙句、高校卒業と同時に引退?
……その傷を癒せない子は、その先どうやって生きてくの」
その通り、だと、思ってしまった。
『花舞ゆ』にいる間に、傷が癒える子ももちろんいる。何もなかったかのように社会に適応して生きていく子たちはいるけれど。
それでも、傷が癒えてない、人は?
その先どうするのかなんて、結局考えていなかった。
「『友情』とか『絆』とか『仲間』とか。
ずいぶんとお綺麗な言葉で纏めて、結局は何の解決もしてないような組織なら、潰したって一緒だよ」
「……そうね」
「この場所では、俺らはお互いに本名を知らない。
まあ学校なんかは知ってるから、調べようと思えば調べられるけど。姉さん以外は、お互いの本名、知らないんだ」
「……どう、して?」
「姉さんが、そういう仕組みにしたからだよ。
"いつか社会に戻った時に、ここに通っていたことが表に出て、過去のことで傷つかないように"って」
「、」
「俺らが"本名で暮らすようになったときは、絶対幸せになれるように"って。
そこまで考えて、姉さんはこの場所を作ってる」