【新装版】BAD BOYS
一般庶民からすれば、「極道」なんて組織とあまり関わりたいとは思わない。
おかげで学生の喧嘩なんかも本当に目立たなくなったし、目立つことをして御陵組にお世話になるようなことは、俺だってしたくない。
それならまだ警察の方がマシだ。
……いや、どっちも嫌だし、お世話になんかならねえけど。
「そーいや、さっき聞いたけど。
『BLACK ROOM』っつうのもあるらしいぞ」
「……なにそれ」
「なんか、一部のヤツが通ってる部屋なんだと。
夜中に繁華街とかにいる学生とか声掛けて、事情聞いて一部はその部屋で保護してるらしーぞ。まあこれは治安に問題ねえから、サツも詳しくは知らねーって」
「保護、ね……」
「噂じゃ『御陵組』の息が掛かってるから、
調べたくも調べらんねえってのもあるらしーけど」
知らない間に色々起こってるな、と。
芹と珠紀の会話を聞きながら、まるで他人事のように思っていれば、何の脈絡もなく染が席を立った。
「……どこ行くの? 染」
「外」
「……外?」
「電話して、もどってくる」
目的だけを告げた染は、言うが早いかカンカンと金切り声をあげる階段を下りて行った。
このガレージの中はどこにいても声が筒抜けだ。わざわざ外に出るってことは、聞かれたくない大事な用件なんだろう。
そう分かったら、それ以上深くは聞かない。
俺らの間に"隠し事"はねえけど、"秘密事"はある。