【新装版】BAD BOYS
『BLACK ROOM』とか『パンドラの箱』とか、そんな表現が似合わないほど綺麗な場所だと思った。
『花舞ゆ』なんて綺麗な名前のついた場所よりも、よっぽど、綺麗だと思った。だから。
「……前にあなたが言ってた、
"俺らのことは蔑む"っていうのは、」
「姉さんのことだよ。
あの人は、御陵の関係者。つまりここにいるヤツは、あの組の援助を少なからず受けながら生活してる。極道がカタギの人間に良い目で見られるわけないでしょ」
「………」
「だけど。
……世間体とかどうでもよくて、本質的に優れてるのはこっちだって話」
「わたしを引き込もうとした、理由は?」
聞けば彼はわたしの極彩色の髪をそっと指で梳く。
それから、それはそれは綺麗に口角を上げた。
「きみがこっちに引き込まれたら、『花舞ゆ』はどうやったって俺らのことを相手にしなきゃいけない。
そこで気づいてくれれば良いと思ったんだよ。向こうにとって、本質的に足りないものを」
「………」
「だからこっちに引き込もうとした」
「……あなた本当は、とっても優しいわよね」
髪に触れている手に、そっと触れる。
それから視線を合わせて、「紫」と彼の名前を呼べば。くちびるに「し」と人差し指を当てて、甘く微笑む。
「ここでの名前は『紫月』だよ。
ホストの源氏名は、そのままここでの名前を使ってんの」
きっと彼にも、何かしらの理由がある。
パンドラの箱と呼ばれるその場所に、彼がいる理由。だけどそれが救われるその日まで、彼らの頂点に立つその人は、見守ってくれるんだろう。