【新装版】BAD BOYS
怒ってる。
普段は女の子に優しくて、どれだけわたしに素で接しても、そんな暴力的な言葉は一切吐かなかった彼が。面と向かって、言うほど。
「違う……あのね、椿、」
「もういいよ、聞きたくねえから」
「だめ……おねがい、聞いて」
ソファに身を沈めて、機嫌悪く舌打ちをこぼす彼。
怯んでは負けだと、彼のそばに駆け寄って、その瞳を覗く。覗いた瞳が今日も綺麗なコバルトブルーのカラコンだったから、泣きたくなった。
「……聞きたくないって言ってんだろ」
いつもわたしに見せてくれる素の口調で。
くれる言葉はきっと、本心ばかりだった。
「心底後悔したよ」
わたしに優しい嘘以外、嘘をついたことのない彼が。
そうやって今日も、紛れもない本心を吐いた。
「お前をここに連れ戻したこと。
……今日ほど後悔したことなんかねえよ」
──わたしがその言葉で傷つくと、わかっていて。
「っ、」
視界が、滲む。泣くわけにはいかないと思っていても、さすがに椿から直接その言葉を聞くのはつらい。
あれだけ優しかった椿に「後悔した」なんて言われたら、怖くて、竦んでしまう。
「っ……、ごめん、ね」