【新装版】BAD BOYS



謝るのは、嫌だった。

ひねくれてるとかそういうことじゃなくて、ただただそんな合理的な言葉で済ませてしまいたくなかったから。だけど何を考えても、それ以上の言葉は出てこなくて。



「っ、傷つけて、ごめんなさい……っ」



「、」



「椿のこと、好きなのに……大好き、なのに。

……わたし、傷つけることしかできなくて、」



知らなかった。

同じように「好き」だと思いあってるはずなのに。わたしと椿のそれには感情に差があって、その感情の差が、何度も彼を傷つけてたこと。



「もう……、終わりに、するから、」



彼のコバルトブルーの瞳が、わずかに一瞬だけわたしを見る。

それだけで泣きたくなった。言いたいことはたくさんあって、だけどどれも今は言えなくて、どれを言っても正解じゃないから。




「今度こそ……

『花舞ゆ』に関わるの、終わりに、するね」



「、」



「っ……後悔するぐらい、

わたしのこと嫌ってくれて、よかった」



ぽろっと、涙がこぼれ落ちる。

涙越しじゃ世界が朧ろすぎて、彼がどんな顔をしているのかもわからない。……だけど。



「っ、ここにいちばんに連れ戻そうとしてくれたのが、椿でよかった……っ」



そこに込めた「ありがとう」を、彼が理解してくれれば、それでいい。

椿は何も言わなくて、袖で強引に涙を拭うと、それ以上何も言わずに階段を駆けおりる。



声が筒抜けだったようで、染は「いいのか」と聞いてくれたけれど。こくんとうなずいて、ほかのみんなへの謝罪を伝言する。

それから。今度こそ帰ってこないであろうたまり場を、振り返ることなく立ち去った。



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