【新装版】BAD BOYS
どうして、だろうか。
2年前のあの時の方が、もっともっと苦しかったはずなのに。椿に突き放された今の方が、よっぽど苦しい。
二度と関われないと思ったあの時より、自ら手放した今の方が、涙が溢れて止まらない。
唯一後悔したことは、椿に告白の返事をちゃんとできなかったことだろうか。
「えっ、はなびちゃん……!?」
「千秋、さ……っ」
「え、えっ、どうしたの……!?」
彼女は働いてるから、もしかすると家にいないかもしれないけど。
偶然いてくれればいいなと、そんな気持ちで向かった間宮家。運良く彼女は今日有給だったようで、出迎えるなり驚愕しながらもわたしを迎えてくれる。
とりあえず家の中に入ったはいいものの、玄関先で崩れそうになる。
涙を拭って彼女に手を引かれるままリビングのソファに腰掛けたところで、かちゃりと開いた別室から、ノアが出てきた。
「はなび、」
「っ……」
「……、おいで」
安心、した。
ノアにぎゅうっと抱きついて、その腕の中でしばらく泣いて。2年付き合っても彼の前で涙なんて、見せたことなかったのに。止まらなかった。
「ノア……っ、」
「ん……大丈夫。ひとりにしないよ」
最後に会ったのは、彼にみんなのことを切り出したとき以来だ。
あの時も泣いてどこか自棄になっていたわたしを慰めてくれたのは、椿だった。