【新装版】BAD BOYS
「……はなびは結局我慢して、爆発するから。
だから俺は心配で放っておけないんだよ」
頭の上を、優しくなでるようにして、彼の手が滑る。
ノアの声は落ち着く。グレーの瞳に見つめられるのも嫌いじゃない。でも今は、コバルトブルーの仮面を剥がしたあのブラウンの瞳が恋しい。
「……千秋と、週末話す約束してたんだってね」
「う、ん……」
「そこで何を言いたかったのかは、俺も千秋もある程度わかってるけど。
わかった上で、いまはもう一度だけ言うよ」
彼がくれた優しさも甘さも。
いつだって彼のわたしへの想いが、目一杯つまってた。無意識に傷つけていただろうわたしに比べれば、彼の今日の一言は、随分と優しい。
なのに、怖いの。
椿の、あの、わたしを拒絶する視線が。──はじめて、だったから。
「……4人で一緒に住もう、はなび」
「っ、」
「もうひとりにしないから」
拒絶されるのが怖い。
誰に対してじゃなく、誰もに対して。
だから無条件に甘やかしてくれる人が好きだ。ずるいとわかっていても、愛してくれる人がいい。
ノアはわたしを愛してくれてた。未来はくれるような相手じゃなかったけど、望めるような相手じゃなかったけど、わたしへの愛情は大きい。
「……守るから、そばにおいで」
逃げだとしても、それでよかった。
うなずくことで傷が癒されることを、ずるいわたしは知っていたから。