【新装版】BAD BOYS
俺がはなびと密かに会ったのは、"秘密事"だ。
はなびがここに戻ってくると決断するまでは、ほかの誰にも話す気はない。
「あ、そーだ。椿」
「ん?なに?」
「お前こないだ、氷見が丘来ただろ?
そんで、見かけたヤツにお前のこと紹介しろって言われてんだけど」
氷見が丘は、芹の通う高校で。
『花舞ゆ』の現高校生メンバーは3校だけで8割を占める。その中でいちばん多いのが、氷見が丘。
次に多いのが朔摩で、3番目が俺も通ってる天皇寺。
ちなみに幹部は芹と珠紀と穂の3人が氷見が丘で、染だけが朔摩。
ちなみに"あの"ノア先輩も、去年まで朔摩の生徒だった。
授業もサボりがちで遅刻常習犯なのに、テストの結果が貼り出されるといつも学年トップに名前があった、らしい。ほんとに嫌味な人だ。
「悪いけど、またの機会に、って断っといて」
「……お前が誘いに乗らねーの珍しいな」
例えばこの話を聞いたのが1週間前だったら、乗ってただろうけど。
生憎今の俺は、本命とのデートプランを考えるのに忙しいからねえ。……なんて絶対言わねえけど。
「……っていうか、芹に女友達とかいんの?」
「失礼なヤツだなお前」
芹の返しはスルーで、同じ学校に通う珠紀と穂を見れば。
さっきからスマホにがっつり視線を向けているくせに、俺の視線の先に気づいた珠紀が「芹モテるよね」と少々的外れな答えを返してくる。
「芹ちゃんは思ってることはっきり言うから、中学のときは怖いって言う子が多かったけどー。
高校じゃ、裏表のない性格だから付き合いやすいっていう子が多いんだよー。芹ちゃん、ぼくらの誰よりも交友関係広いもん」