【新装版】BAD BOYS



会いたい。こんなところにいたら本気でストーカー認定されそうだな、と。

1ヶ月前の、はなびに再び会えるかもしれない事実に賭けた自分の事を思い出したら、余計に苦しくなった。



ほかのヤツには言わないから、って。

めちゃくちゃな約束でデートを取り付けたけど。言わないんじゃなくて、ただ言いたくないだけだった。



はなびが帰ってきている事実を、俺だけが知って、ただ独占しておきたかった。

……そんなことを考えたから、こんな目にあっているのかもしれない。



「……、」



ああでも、これでいいのか。

はなびはあの人と幸せになるだろうし、俺は片想いを自分の手で無残にも叶わない形にしてしまっただけ。歪が生じたのは、俺への感情のみ。



「……会うならちゃんと会って帰れよ」



うしろから。

声がして振り返れば、芹がかったるそうに俺の方へと歩み寄ってくるところだった。




「……、ストーカー」



「勝手に言っとけ。ほら、付き合ってやるから」



「……会わねえよ。

会ったら絶対泣かせるから、会いたくない」



「お前まじで腹立つな。

じゃあなんでここまで来たんだよ」



「……歩いてたら辿り着いただけだし」



そんな俺の下手な言い訳を、「なんだそれ」と一蹴する芹。

黙っていれば郵便受けを確認しだして、何をしようとしているのかはわかったけど。



黙って見ていれば見つけたようで、芹はなんのためらいもなく部屋番号を入力する。

けれど応答はなくて、留守にしているらしかった。



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