【新装版】BAD BOYS
日用品なんかは自分で揃えるだろうし。それなら、増えても困らない服の方がいいだろう、という話になって。
電車をおりた頃には、珠紀が言ったワンピースという意見が最有力候補になっていた。
「んじゃー、テキトーにレディースのアパレルショップ入るか?」
「……どう足掻いても目立つんだけど」
「お前も目立つ原因だから仕方ねーっつの。
逆に別れた方が囲まれたりしたらめんどくせーし」
はあ、と珠紀が薄くため息を吐く。
夏休みの、しかも日曜日のショッピングモール。家族連れからカップルから、女子同士の買い物まで。人は当然ながらに多い。
「2人ずつ店に入って、3人は外で待機するっていうのをランダムでやればいいんじゃないの。
それならどっちかが女の子に声掛けられても、目の届く範囲だから助けられるでしょ」
絶えない、女の子たちからの視線。
でもそれを気にしてたら、どうしようもない。……はなびは、中学のとき。6人で過ごして、何度女の子に悪く言われてもそばにいてくれた。
「──……き、」
覚悟がなかったのは俺の方だ。
いつだってあいつは前だけ向いて歩いてんのに、俺だけがまだ、そこから進めないでいる。
「椿。おいこら、聞いてんのか?」
「……え。あ、悪い。
ここ入ってくる前、外暑かったからちょっとぼーっとしてたわ〜」
「……行くぞ。
はやく決まったら、染がアイス奢ってくれるらしーぞ」
「……俺はそんなこと一言も言ってねえけどな」
気づいてねえわけ、ない。
もう何年も一緒にいんのに、俺の下手くそな言い訳を気づいてないわけない。それでも全員が笑って流してくれんのは、他の誰でもない俺のため。