【新装版】BAD BOYS
ハンガー同士がぶつかって、カシャっと音を立てる。
たぶん似合うだろうけどイメージと違うなと思いながら店の奥へと足を進める俺についてくるようにして、ちらほらと商品に目をやる穂。
「たまちゃんは、素直じゃないから。
心配してるって言えないだけで。……なんだかんだ、つーちゃんのこと心配してるんだよ」
「心配、ねえ」
「今日だって、5人で買い物に行こうって切り出したのは染ちゃんだったけどー。
この間からたまちゃん、『夏休み入ったら椿の気晴らしにどっか行かない?』って染ちゃんに色々と言ってたし」
「………」
不器用なヤツだ。
その本人はといえば、スマホから一切顔を上げずに、俺らの様子を見ることもしてねえけど。っていうか全員がそうだ。
芹はアレ絶対スマホでゲームしてるし、染は……誰かと電話中だし。
個人プレーで何かやるのはいいにしても、もうちょっと関心を持って欲しい。
「あ、つーちゃんこれどうー?」
「お。いいんじゃねえの?
……っていうかモールってレディースのアパレル多いよねえ。色々回んなら、時間かけてられねえと思うんだけど」
「そうだよねー。
っていうかみんなもうぼくらのこと放置じゃん。このお店の服かわいいけど、はなちゃんっぽくないから次行こ?」
「……あいつら置いていっていいかな」
ふっとため息を落として、さっき穂が見せてきたワンピースはまあ可愛かったな、程度で店を出る。
そのまま「ねえみんな、」と穂が女子から熱視線を浴びている3人に駆け寄ろうとした瞬間。
「っ、あぶな、」
横から駆けてきた小さな女の子が穂とぶつかりそうになって、咄嗟に彼女に腕を伸ばす。
ぐっと引き止めた女の子を自分側に抱き寄せてなんとかぶつかるのを阻止すると、思わず安堵でため息が漏れた。