【新装版】BAD BOYS
ぴょんっと席から立ち上がった穂に、「なら行くか」と声を掛けて。
ガレージを出れば、日差しがきつい。今日も暑いな。ニュースでまた猛暑日だとかなんとか言ってたけど。
「あれ?
コンビニ行かないの?つーちゃん」
「いや、ひとりで行くならコンビニのつもりだったけど。
せっかく出てきたんだし、ショップまで行こうじゃねえの」
言えば目を輝かせる穂が、「すいてるかなぁ?」とご機嫌で俺の隣に並ぶ。
夏休みに入って少ししてから、また髪を染めたらしい。色の落ちていたミルクティーが綺麗に復活して、毛先はヴァイオレットから淡いブルーになっていた。
「つーちゃん……
はなちゃんに、告白したでしょ?」
「……したよ。
したけど、その次の日にああやってはなび泣かせてあんな風に傷つけたし、はなびにとってはトラウマもいいとこだろ」
気づいてるだろうな、とは思ってた。
だから「告白したんでしょ?」と言われてもそれを否定はしねえし、はなびはそもそも俺の気持ちを信じてないかもしれない。
「つーちゃんってー。
はなちゃんに対してだけ、ものすごく自信なくすよね。自己評価低いよ」
「……誰だって好きな相手にはそんなもんだろ」
「うん。でもぼく、つーちゃんのそういうところすごく好きなんだよね。
なんていうのかなー。大人びてなくて年相応っていうか、背伸びしてなくて等身大っていうか。……はなちゃんの前で無理してないでしょ?」
つっ、と。早くも汗が首筋を流れるのを感じる。
これさえなければ、夏も嫌いじゃないのに。暑いのも寒いのも、あんまり好きにはなれない。強いて言うなら冬の方が好きだ。
「はなちゃんは、先輩の横に並ぼうとしてすごく頑張ってて。
……別に好きだからいいんだけど、そういうのって、結局疲れちゃうんじゃないかなと思って」
「………」
「例えばだよ? 例えば、はなちゃんがこの先先輩と結婚するってなったときに。
人生をいちばん長く一緒に過ごす人の前でどっちかが無理してたら、いつか壊れちゃうよ」