【新装版】BAD BOYS
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「いってきます」
「いってらっしゃい、おにーちゃんっ」
休日で用事もないのに俺を玄関まで見送りに来てくれるかわいい妹を、手に持った紙袋をつぶさないようにしながら、ぎゅうっと抱きしめて。
もう一度「いってきます」を告げてから家を出れば、見事な快晴。
本日7月30日。──はなびの、誕生日。
ふっと吐息を吐いて、目指す先ははなびのマンション。
現時刻、9時45分。はなびの家までは徒歩で10分かからないから、10時前には着く。
10時前にインターフォンを鳴らすか、はたまた10時まで待ってから鳴らすか。
期待はしてねえけど、後者なら数分結果を知るのが遅れるだけ。どっちがいいだろうなと、特に重要でもないことを考えながら、歩くこと数分。
「……、さっさと鳴らすか」
たどりついたマンション。
紙袋を右手から左手に持ち替え、オートロックの機械に指を乗せて。部屋番号を打ち込み、小さく深呼吸をしてから、呼び出す。
「……、」
数秒、待っても。……返事は、なし。
未練がましくもう一度打って鳴らしてみたけど、当然応答はない。
仕方なくポケットからスマホを取り出せば各々からメッセージが送られてきていたことに今更気づいて、苦笑すると同時に心の中で「ごめん」と謝った。
手の中にある紙袋は、はなびの誕生日プレゼントに、と俺らで買ったもの。
直接受け取ってもらえたら、よかったけど。
……残念ながら、それは無理みたいだ。
「……先輩に、連絡するか」
俺がとやかく言うことじゃない。
これがはなびの、選んだ答えで。──それであきらめると言ったのは、俺なんだから。