【新装版】BAD BOYS
「椿……!」
あの人に、普段電話なんてかけないし。
名前を探していたら聞こえた声に、ハッと顔を上げたのは無意識だった。なぜかマンションではなく、俺が来たのと同じ道から駆け寄ってきたのははなびで。
「っ、よ、かった……間に合って、」
「………」
「ノアに引きとめられて、
あやうく10時過ぎるところだった……」
遅くなってごめんね、と。俺を見上げた彼女。
どっから来たの、とか。ここに来てくれたってことはそれって、と。
そんな疑問はたくさん浮かんだのに。
はなびを見たら、何かがいっぱいいっぱいになってしまった。
「わっ、」
よっぽど急いで来たのか、まだ息を整え切れていない彼女をぎゅうっと抱きしめる。
衝動的ではあったけど、プレゼントが潰れないようにちゃんと気を遣って。抱きしめて耳元で最初に告げたのは「ごめん」だった。
「……ひどいこと言ってごめん」
「、」
「ほんとは……この間、ばったり会ったときにそう言うべきだったんだろうけど。
ごめん。……傷つけて、泣かせてごめんな」
言えば、ふるふると彼女が首を横に振る。
それにあわせて、ふわりと透明な花の香りがして。彼女は顔を上げると、はじけるような笑顔を見せてくれた。
「ふふ、いいよ。
誠意は……今日1日でいっぱい見せてもらうから」